2016八丈島紀行 ひょいっと(1) amongのふたり

amongのふたり。左から金子桃子さん、中村寛子さん。

八丈島を訪れたのは、15〜6年ぶりだった。

一時期はダイビングやガイドブックの取材で年1〜2回訪れていたと思うのだけど、最近はすっかりごぶさたで、おがさわら丸のデッキから眺めるのみになっていた。

よく行っていた当時の八丈島の印象は、よそから来る人を受け入れるオープンな気風は感じたけれど、ホテルが閉館したりお店が減ったりと、人口が減り島の元気が少し無くなっているような気はしていた。

 

当時の人口は8000人ぐらいだっただろうか。

現在は約7000人というから、やはり「かつて人気だったさびれた場所」になってしまっているのかな……という勝手な憶測で島に入ったところ、まったく期待を裏切られた。

 

えっ、何、この楽しそうで活気があって、若い島!

 

30代、40代の移住者たちが、新しい仕事や活動を根付かせていて、それが島の印象をがらっと変えている。

 

数回にわけて、その驚きとステキさを伝えてみたい。

 

今回、古い友人の岩崎由美さんに全面的にお世話になった。

そもそもは、朝日新聞出版のWEBメディア「dot.」で八丈島乳業(株)の話を書きたくて出掛けたのだけど、せっかくだからもっといろんな人にも会いたいと呟いたのを受けて、たくさんの人とあえるようにセッティングしてくれたのだ。由美さん、ほんとうにありがとう。

 

今回会った人たちの自然体と、それなのにやってることのすごさのギャップ、でもキーワードは「ひょいっと」かなと。

 

どの人も、やる前に大変だ、苦労する、どうすればできるだろうとか考えすぎず、「ひょいっと」飛び込んでやっている。

 

金子桃子さんと中村寛子さんもそんなひとたち。

年齢をお聞きしなかったけど、おそらく20代後半か、30代前半であろうふたりは、アパレルのオリジナルブランド「among」を展開している。

 

金子さんは八丈島在住、中村さんは横浜に住んでいる。

ふたりは以前、ビーガンカフェで働く仲間だった。そのときには特に深い話をする間柄ではなかったが、偶然おなじころに退職し、では会おうかと職場の外で会って話していたら

 

「考えていることとか、やってみたいこととかがおもしろいほどおなじだったんです」。

 

じゃあ、ふたりで何か新しいことをしようよ。と、そこからコラボが始まった。

 

やったことあるのはカフェだよね。

うん、でもカフェ経営はちょっとむずかしいし、それがやりたいことかな?

そうだね、好きなことはものをつくることだよね。

 

そんな会話があったかどうかは定かではないけれど、いろいろとふたりで顔をつきあわせ「じゃあやってみよう」と決めたのが、

 

「アパレル」!

 

やったことがない人が手がけるには、ハードルが高そうな、アパレルのオリジナルブランド展開を選んだふたり。

もちろん、立ち上げるだけなら今はいろいろなサポートサービスがあるけれど、継続させていくにはかなりの努力が必要になりそうな仕事である。

 

でもふたりにはそんなことは関係なかったのかもしれない。

 

「えーい、やってみよう! って思ってはじめました」

と、くったくなく当時のことを語っているからだ。

 

わたしがふたりに出会ったのは八丈島の「空間舎」というカフェ。2階でふたりがポップアップストアといって、実験的に製品販売を行っていたときだった。

 

そこに広がっていたのは、鮮やかでありながら、目にすんなりと入ってくる色! どうして、黄色や赤など激しい色も多いのにこんなに落ち着くのかな? 

 

そうだ、この色は自然の中の花や緑と同じ色だからだ! と、気がつく。

 

そして、デザインがまたとてもおしゃれなのだ。幾何学模様を組み合わせたようなもの、花と葉、それに縦線を組み合わせたもの……うーん、言葉にしてしまうとうまく伝わらないので、amongのサイトをぜひのぞいてみてほしい。

 

ストールはコットンのものと、シルク混のものがあった。

 

「シルクは横浜の職人さんに頼んで手作業でプリントしてもらっています。横浜はもともと、スカーフなどをつくる職人さんが多かったんです。いまもその技術を持っている方に抜染で型染めをお願いしています」

 

と、中村さんが説明してくれる。

デザインがとてもステキだけど、図案はだれが描いているのですか? とたずねると、

 

「ふたりで紙に書きながら練り上げていくんです。こんな風かな? ここに、こういう模様が組み合わさると、もっとすてきじゃない? そうだね、だったらこの部分はこんなふうにカットして……みたいな感じで、ふたりでつくりあげていきます」。

 

今回のテーマは「ひらく」。

それぞれのデザインは色違いがあり、1つ1つに言葉がついている。

 

桃栗三年柿八年 というデザインにはピンク(安心)、オレンジ(収穫)、グリーン(調和)という感じだ。

「これ、すてきだわ」

 

訪れた島の女性がシルク混のストールをふわっとまとう。

窓からの光線で透けて見える、そのあんばいがとてもうつくしい。たとえは変だけど、美しい昆虫の翅みたいだ。

 

でも、ストールは18500円、税込で19980円。

即決で「ください」というには少々決心がいる。

ところが、わたしが滞在していたわずか30分ぐらいの間にたちまち2枚もストールが売れた。

 

彼女たちがつくるものはそれだけ魅力的なのだ。

思うに、色やデザインもだけど、タイトルにこめられた「意味」が、製品からつたわってくるからではないだろうか。

 

たとえば、「海 カリフォルニア」と名付けられたハンカチについて、Facebookページでこんな記載をしている。

 

「海中から太陽を見上げた時に見えた光の景色をデザインしています。

普段 陸にいるいる私たちは、海の中のできごとを想像することはあまりないかもしれません。

忙しい時こそ視点を変えて、リフレッシュできたらいいなー!

そんな風に考えて生まれた海のデザインです。

今日も新しい視点を持って、色々なものごとを見つめられますように。」

 

こうした思いでつくられた製品だから、身につけたときにそのメッセージが身体に伝わってくるのではないだろうか。

だって、1つ1つ思いを込めてつくられているものだから。

 

 

金子さんはもともとアパレルに関する専門学校の出身ということだから、ものづくりの工程は知っていたのだろう。

でも、商売は? どうなのだろう、たぶん、今が初めての取り組みなのでは?

 

amongは今年3年目を迎える。

一般的に、起業してから3年目までがもっとも苦しい時期とされる。それをもう超えようとしている。

 

もちろん、ふたりの笑顔のうしろには、言葉にできない苦労があったかもしれない。でも、「やってみよう!」で、ふつうの人がためらうことをひょいっと飛び越えた。

 

次は八丈島バージョンをリリース予定というふたり。

どんな色、デザインが飛び出すんだろう。

きっと、八丈島の濡れた緑、あふれる光線、色とりどりの花、そして開放的な空気が布の上でおどっているにちがいない。

 

among HP

http://www.among.jp/index.html