小笠原がほかと違う理由?(1) 歴史を知らないと分からないこと

よく自己紹介でもいいますが、私は小笠原と出会う前に国内外あわせ50〜60の島を訪れています。プライベートでも、仕事でも、時間があれば島に行ってたような気がします。

どの島も、帰るときには「もう一度ここに来たい!」と思いましたが、「いつかここに住みたい!」と思ったのは小笠原が初めてでした。

それは、やはり若い島だから、よその人をオープンに受け入れてくれる島だから……。そんな風に感じたように記憶しています。

 

「若い」というのは、小笠原は1968年に米軍統治から日本に返還され、歴史の作り直しをした島だからです。

1945年、日本が敗戦を迎えたとき、沖縄、奄美と、そして小笠原は米国の信託統治領となっていて、小笠原は米軍の統治下に置かれていました。

1946年には欧米系住民だけが戻りましたが、全島民が強制疎開させられ、一時期は米軍しかいなかった土地は小笠原だけです。奄美も沖縄も、住民が居ながらにして統治下に置かれていたので。

 

1968年、小笠原が日本に返還された時、全島民強制疎開から実に23年もの月日がたっていて、アンケートでは7割の元住民が「すぐに戻りたい」と希望を口にしていたものの、実際に戻った人はそれよりはかなり少なかったのです。

23年はあまりに長すぎました。

 

一方で、小笠原という新しい場所に魅力を感じて移り住んできた人は結構いました。今、すぐにその比率が出せなくて申し訳ないのですが、新しい日本の領土、南の美しい島に、インフラなどが整っていなくても移り住んできた人もたくさんいたのです。

今に至る小笠原の歴史の第3幕は、このときにリスタートしたといえるでしょう。もともと、よそから移り住んできた人が多い島だったんです。

 

沖縄も、伊豆諸島の各島も、それ以外のたくさんの島も、旅人として訪れる私に「こんなすてきな場所があるんだ!」と思わせてくれる豊かな表情を見せてくれました。

しかし、ふとした、なんてことない一瞬に「ここから先はよそ者立ち入り禁止」という厳然とした境界線があるのを、その島に関われば関わるほど感じる、たくさんの島でそういう経験を何度もしました。

でも、小笠原はなんだかスコーンと天井が抜けているような、どこまでも入っていいよ〜別に秘密とかないから……といっているような、なんだかそんな気がしたんです。

それは、古い慣習や風習がない、そういうことと関係していたのですが、私はそのスコーンと突き抜けた感じが好きになり、それで「ここに一度住んでみたい」と思ったのでした。

 

「島の人に会いたい」という人

ところで、そういうこととはぐいっと話が曲がりますが……。

先日、直接知り合いではないけれど、小笠原に初めて行く方に島の情報をいくつかお伝えしました。

その方が帰ってこられてから、感想を書いたメールのようなものを間に入った方経由で見たのですが、そこに書かれていたあることに目がとまりました。

 

「お会いしたどの方も、他県のご出身で、島の方にはお会いできませんでした」。

 

これね、非常に良く聞く言葉です。

初めて行った人のブログなんかを見ていても、「ガイドしてくれた××さんは〇〇の出身で、島の生まれではなかった」みたいなことがよく書いてあります。

 

なんだか分からないけれど、小笠原に初めて行った人は、出会った人が小笠原出身者でないとちょっとがっかりするらしい。

 

まあ、気持ちは分かりますよ。でもね、小笠原で島生まれ・島育ちなんて人、今、ようやく20代や30代前半では出てきましたけど、それ以上ではいませんから。

それは先に述べた「長きに渡る、強制疎開の期間」のためです。

でもね、もし小笠原に行って「ここっていいところだな……」と感じたのだとしたから、その雰囲気は、間違いなく、その、小笠原出身以外の人たちも、作ってきたものですから。

 

そういう部分で小笠原は島らしくないとも言えるのですが、今、いろんな場面で中核を担っている人たちの大半は、よそから来た人たちです。

島生まれで成人して島で働いているような世代は、ようやくちらほらと現れてきたばかりです。

 

つまり、小笠原って「島」という世界において、珍しく「よそから来た人と、島で育った人が今、一緒に新しい歴史を作っている」場所なんです。

 

私のようなよそ者がずっと関わり続けられているのも、だからこそだとも言える。

 

どうぞ、小笠原で出会った、小笠原出身以外の人との出会いを大切にしてくださいませ。

 

もちろんね、ラッキーにも戦時中や戦前のことを知っている方と知り合えたらそれはまたすばらしいこと。

もしそういう方たちと話ができたら、上に書いてきたようなこととはまた違う、いくつもにも層が形成されているような、深くて複雑な小笠原という場所のことが見えてくるでしょう。

 

ほかにどこにもない島。自然だけじゃなくて、人と歴史だけでも、そういうところなんだって、私は思います。